デノン Denon
プリメインアンプ (プレミアムシルバー) PMA-SX11-SP [DAC機能対応 /デジタル] [DAC機能対応]
PMASX11SP
Advanced UHC MOSシングルプッシュプル回路、 MC/MM対応CR型フォノイコライザーを搭載した ハイパワープリメインアンプ
通常価格 ¥360,000(税別)
Advanced UHC MOSシングルプッシュプル回路搭載プリメインアンプ
■Advanced UHC MOSシングルプッシュプル回路
■砂型アルミ鋳物ケース封入電源トランス
■MC/MM対応CR型フォノイコライザー
■バランス入力&エクスターナル・プリアンプ入力
■ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション
デノンから、11年ぶりとなる「11シリーズ」新モデルが登場した。プリメインアンプ「PMA-SX11」は、SACDプレーヤー「DCD-SX11」と対をなすモデル。旗艦機「PMA-SX1」の思想を受け継ぎつつ、サウンド面で“新しい方向性”も示唆する意欲作だ。オーディオ銘機賞 2015において「銀賞」を受賞した本機の実力をレビューする。
筆者がこれまでデノンのプリメインアンプに抱いてきたのは、量感豊かな低音を支えにした骨太のサウンドというイメージだ。一方、本機の再生音はそれを継承しつつ、新しい方向性を聴き手に示しているというのが筆者の第一印象で、今回の試聴でもそれを示唆するサインをいくつか聴き取ることができた。
具体的な例をいくつか紹介しよう。最大の変化はやはり低音に現れていて、特にバスドラムやティンパニなど低音を受け持つ打楽器は、以前の塊感のある低音の芯の部分を生かしつつ、音が出る瞬間のアタックを鮮やかに描写して、皮の質感や張りの強さが以前よりもリアルに伝わるようになった。時間的には一瞬のことだが、立ち上がりの瞬間を正確に再現すると、同じ低音のなかでも楽器ごとの音色の違いが鮮明に聴き分けられるようになり、動きや起伏の豊かな演奏に生まれ変わる。エレキベースとバスドラムが同じ音域で動いているようなフレーズを聴くとわかりやすいが、オーケストラでもコントラバスとティンパニが弱音で重なる箇所などで、本機の進化を聴き取れるはずだ。音量を上げても低音のアタックがふらつかず、揺らぎのない低音を引き出すのも上級機譲りの美点と言える。
アタックが速くなったとは言っても、音の輪郭がことさら強調されることはない。女性ヴォーカルをサポートするウッドベースがゴリゴリとした感触にならず、自然なタッチでリズムを刻む様子が心地良いし、アコースティックギターが過剰にメタリックに響くこともない。エッジを強めて実在感を引き出すのではなく、発音の速さとキレの良さで小気味良くテンポが動いていく感触に好感を持った。ヴォーカルも子音が刺激的に刺さることがなく、あくまでも自然体。その方がかえって肉声感が生々しく伝わることに気付かされる。
もう一つの変化は、従来以上に広々とした音場を再現することで、特に、演奏会場のアコースティックを生かした録音では空間の見通しの良さが際立つ。音が放たれたあと、その余韻が空間を満たし、響きが浸透していく雰囲気は見事なもので、弱音や空間情報を忠実に引き出していることがうかがえる。回路同士を物理的に離したセパレート構造や入念な振動対策が功を奏し、微小信号の再現性が確実に向上しているのだ。普通に聴いていてもS/Nの良さは実感できるが、前の音が消えて次の音が出るまでの短い休符の部分でも、もやもやとしたところがなく、音にまとわりつく付帯成分が非常に少ないことがわかる。前作のPMA-SA11も繊細な表現を得意としていた記憶があるが、ノイズフロアが十分に低い本機は、さらに空間の透明感が高く、強弱のダイナミックレンジにも余裕が生まれている。
ラインナップの中核を担う製品だけに、熟成が進んだ落ち着きのあるサウンドを想像していたが、PMA-SX11の再生音からは次世代を担う新しい志向が感じられ、DCD-SX11とも方向性を共有していることがわかった。SX1とはひと味違う個性でデノンの新しい世代を担っていくことを期待したい。
文:山之内 正
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。